Mind ─マインド─

高い評価を得た「明治おいしい牛乳」のパッケージ。
「明治おいしい牛乳」の全国発売が始まったのは、2002年6月のこと。パッケージデザインの制作に一流のクリエイターを起用し、TVコマーシャルも放映するなど、それまで牛乳とは無縁と思われてきたマーケティング戦略を展開。業界の常識を打ち破る、新たな挑戦に満ちた船出でした。
それから1年、「明治おいしい牛乳」は当初の予想をはるかに上回る350億円を売り上げ、一躍、全国の牛乳ブランドのトップに立つことになります。
2002年度から2003年度にかけては、独創的技術のある食品の開発研究に対して贈られる賞、デザイン・パッケージに関する賞など、十数もの賞も受賞しました。
牛乳とは、牛から搾ったままの乳を加熱殺菌したもの。水や添加物を加えたり成分を除去することは一切禁じられているため、味の差別化は難しいといわれてきました。そんななか、1つの牛乳がブランドとしてここまで支持され、世の中の注目を集めたのは異例のこと。その背景には、「おいしさとは何か?」という根本的なテーマから始まる、長い道のりがありました。
「明治おいしい牛乳」誕生のきっかけは、1989年、当時の中山悠社長(現会長)が就任時に「お客様に喜ばれるおいしい牛乳を作ろう」と呼びかけたことにさかのぼります。さっそく研究が始められましたが、いざ取りかかってみると、「おいしい」とはどういうことかを定義するのはたいへん難しい問題でした。
「コクを好む日本人の嗜好に合わせて、牛乳の脂肪球の大きさを調整してみてはどうか」そう考えて売り出した牛乳は、今ひとつ軌道に乗れないまま。業界のブームに乗って「産地」へのこだわりを打ち出した製品も、結局は支持を得られず、価格競争の波にのまれてしまいました。
省令等の定めにより、「牛乳」と表示できるのは、生乳以外の原料を一切加えない(無調整)ものに限られます。牛乳の差別化が難しいのはこのため。なお、生乳にクリーム、粉乳など、牛乳からできた原料を加えて濃度や脂肪分を調整したものは「加工乳」、コーヒーや果汁、カルシウム、ビタミンなど乳製品以外のものを加えたものは「乳飲料」と分類されます。

専用の機材を使ってにおいを嗅ぎながら分析します。
研究所では、牛乳の風味に敏感な所員を選抜し、産地や製法の異なる牛乳について、毎日風味の分析を行っていました。しかし、牛乳の風味の差はわかってもおいしさに結び付けることはできません。
そんななかで浮かんだのが、「牛乳嫌いな人が牛乳を嫌う原因を解消すればよいのでは」という発想。調査の結果、主な原因は、乳臭さやあと味のべたつきであることまでは分かりました。しかし、それを解消する方法となると、やはり見つかりません。
解決の糸口となったのは、「おいしい」と聞いて取り寄せたある産地の牛乳でした。
その牛乳は最初、確かにとてもおいしく感じられました。ところが、冷蔵庫に入れ、数日経ってから飲むと、風味が落ち、少し酸化臭がしたのです。「ひょっとしたら、牛乳の中に溶けている酸素が本来のおいしさを損なっているのでないか」。今まで当然のこととして見過ごしていたことが、新たな視点として生まれたのです。
ためしに、加熱殺菌前に牛乳に含まれる酸素の量を調整してみました。すると、加熱前の酸素を4分の1以下に抑えたところで、乳臭さやべたつきがなくなり、牛乳のもつ本来の自然な風味が保てることが分かったのです。
食品が本来持つ「おいしさ」へのこだわり。それは「明治おいしい牛乳」の命ともいうべき、「ナチュラルテイスト製法」への第一歩でした。牧場で飲むような新鮮な味わいを再現したい。その発想が製法開発の原点となったのです。
この考え方は、その後、他の製法にも展開されていきました。たとえば、2003年に発売した乳飲料、「カフェフレッソ」に使われている「P.U.R.E.(ピュレ)製法」。抽出してから時間が経つと酸っぱくなってしまうコーヒーを、いかに挽きたて、いれたての味のままでキープするか。その発想の出発点は、牛乳の新鮮なおいしさをキープしようとした「ナチュラルテイスト製法」と共通しているのです。
牛乳の中の酸素を減らすことで酸化を防ぎ、牧場で飲むようなまろやかなコクと香り、後味のさわやかさを実現した製法。2000年に特許取得済み。
破砕・練り込み用の機械を使い、豆をひきながら抽出することで、水出しでありながら40秒という短時間での抽出を実現した製法。熱湯で抽出したコーヒーの、「香りは高いが時間をおくと酸化して酸っぱくなりがち」という欠点を克服しました。
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